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大橋麻里子/Ohashi Mariko

2023年2月に開催された、FILT.では初出展となった「大橋麻里子展」。
個展での展示作品の中より、6点を引き続き展示販売させていただくことになりました。
ぜひアートを身近に感じていただく機会となりましたら幸いです。

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大橋麻里子氏はペインティングの手法をベースに自身の手で引いた線を重ね、図柄や異素材をコラージュし、その積層で出来上がる作品が美しい。そこには重ねた深みや色やハーモニー、図柄のリズムが生まれる。
人は暮らしの中で彩りやリズムから感性を育み、心を豊かにする。
大橋麻里子氏の作品は重ねる図柄の奥行き、それぞれの図柄の個性の楽しさ、質感の差で生まれる飽きない律動を暮らしに落とし込む。人が感じるリズムを可視化したような作品です。
家具のデザインコーディネートに絵画を加えたリズムをお楽しみください。

-profile-
大橋麻里子さんはペインティングという手法をベースに、キャンバスの上に自らの手で引いた線を積み重ね、彼女自身の身体に紐づいた時間を作品に堆積させ、可視化された時間としての絵画を制作しています。

絵画を単純な平面的な図式、言い換えるならば単なるイメージとして捉えない大橋氏は、それをどこまでも物質性を備えたオブジェクトであると考えますが、だからこそ制作においては彼女自身の手によって線を引くことを重視し、それは一つの作品が完成するまでに毎日キャンバスに描かれ、日によって微妙に異なる彼女自身の感覚、バイオリズムとそれに伴う時間性をゆっくりと定着させていきます。

同時に彼女はその方法においてコラージュを採用し、線ときにはコミックの図柄を引用しながら画面を構成していきますが、それは絵画におけるイメージの階層化による画面の記号性を高めるのみならず、日を跨いで引かれる線描そして図を積み重ねることによって時間と意味の堆積を、あたかも大地や樹木が経年によってつくり出す層のような要素を絵画に与え、時間を可視世界のレベルに引き出し、新たな視覚言語として再構築しようとする狙いがあります。

大橋氏はどこまでも物質性、時間性を強く意識させるギミックを絵画に持ち込みますが、そのどちらも私たち人間存在を取り巻いている重大な要素であり、それはあらゆることがデジタル化し、電子端末をはじめとするツールによって私たちの日々が簡略化され、その生活から身体性が遠のいていく現代においては高い声量を持ったメッセージ性を帯びるでしょう。大橋氏の絵画は、その意味において、どの時代においても通底する私たち人間の位置、存在、そしてその世界を描き出していると言えるでしょう。